【読書感想】33歳の決断で有名企業500社を育てた渋沢栄一の折れない心をつくる33の教え/渋澤健

渋沢栄一 本・映画

渋沢栄一の玄孫にあたる渋澤健さんの本。

小学校2年からアメリカ移住し現在では会社経営をされているようで、本来は澁澤のところ、漢字が苦手なので渋澤と書いているそう。この本での表記は一般に見慣れた渋沢。序盤は渋沢栄一の人生の紹介で、おすすめの論語からその例と、渋沢健さんの体験や意見も入っていてわかりやすく面白かった。

終盤にかけての内容と流れが、今後の理想的な社会全体へと盛り上がってきて勇気づけられる内容。

渋沢栄一の自伝は、こちら↓が詳細でわかりやすく面白かったです。

以下、気に入った部分の抜粋。太字は渋沢栄一の言葉。

栄一が度重なる挫折にもかかわらず、生涯をかけて500社もの会社を立ち上げ、日本の経済力を高めることに貢献できたのは、未来を信じることができたのもありますが、それと共に自分の夢をあきらめなかったからだと思うのです。

目的には理想が伴わねばならない。その理想を実現するのが人の務めである。

無欲は怠慢の基である。

夢はある意味、欲につながる面があります。こうしたい、ああしたいという欲求があるからこそ人間は一所懸命になって事に当たれるのです。

人は死ぬまで同じことをするものではない。 理想にって生きるのが、趣味ある人の行動である。

趣味ある人というのは、決して多趣味な人という意味ではありません。人生を味わう人という意味です。 つまり理想を追いかけ続けるのが、人生を味わう人の行動だということを、栄一は言いたかったのです。

自分の身近なところにある課題を見つけ、それを改善するという小さな改革でいいのです。大勢の人がみな、自分の身の回りにある小さな課題の改善に取り組んでいけば、それがいずれ大きな流れに変わり、日本を変える原動力になるはずです。

自分からこうしたい、ああしたいと奮励さえすれば、大概はその意の故意にねじけた人となって逆境を招くようなことをしてしまう。

すべて世の中の事は、もうこれで満足だという時は、すなわち衰える時である。

老人になれば、若い者以上に物事を考え、楽隠居をして休養するなどということは、絶対にしてはいけません。逆に、死ぬまで活動やめないという覚悟が必要なのです。

現状に満足したら、誰も何の努力もしなくなります。何の努力もしなくなったら、人間としてどんどん衰えていきます。

現状に満足できず不満だらけという人は、大いに見込みがあるのかもしれません。不満があるからこそ、それを何とか取り除こうとして、様々な手を尽くそうとするからです。

利益は全て自分のものなど独り占めすることなく、利益を社会に還元しなければ、経済活動が持続しない。

論語(道徳)とそろばん(経営)を一致させることが、今日では極めて大切な務めであることを言っており、それは「良い金儲け」とイコールです。

「小事に拘わりて大事を忘るな」小さいことにこだわるな!

建築物や工業製品、あるいは芸術などのモノづくりに関しては「神は細部に宿る」

真似はその形を真似ずして、その心を真似よ。

この言葉の言わんとしているのは、単に形式だけを真似していてはダメで、本質を真似ることが大事だということです。

自分自身の実力をさらに昇華させたいと希望するのであれば、「形」だけを真似るのではなく、その心、つまり本質を真似る必要があるのです。

本当に夢を追いかけている人は、お金があるとかないとかは関係ないのです。

どうして夢の実現に必要なお金を自分の労働だけで作ろうと考えるのでしょうか。自分の稼ぎだけで調達できないお金は、他から持ってくればいいのではありませんか。

信用は暖簾のれんや外観の設備だけで、収め得られるものではなく、確乎たる信念から生じるものである。

信念のあるビジネスアイディアには、必ずスポンサーがつきます。

「何とかして世の中を変えていきたい」と思っているならば、日常に流されてはいけません。

日々に新たにして、また日に新たなりは面白い。すべて形式に流れると精神が乏しくなる。なんでも日に新たの心掛けが肝要である。

誰か相談できる人が心強い。目上の人から可愛いやつと思われるようになれば、色々な場面で効いてきます。では、そのためにはどうすればいいのか。これはもう積極的に外に出ることです。会社の人間関係の枠内だけで生きていると、永遠にこの手の人脈、信頼関係を築くことはできません。単に勉強会に参加しているというだけではダメで、そこで積極的に発言するとか、とにかく目上の人に自分を印象づけるようなことをしなければなりません。

知識だけ備わっている人は、ある意味、ずる賢くなる傾向が多分にあります。それでは常識人とはとても言えません。だから、情愛、つまり人に対する思いやりを持つことによって、ずる賢くならないようにする。ただ、情愛が溢れていると、今度は周囲に流されてしまう恐れがあるので、そこには意思が必要になります。でも、意思ばかりが強いとただの頑固者になってしまうので、最終的には知情意が揃って昇華していくことが望ましく、その努力を常に怠らない人が常識人だということです。

完きまったき人は知情意という3つの側面をバランス良く持ちつつ、それらを均等に大きくしていける能力を持った人。

人に対して敬礼を欠いてはならない。されどただ形式だけの敬礼は、往々相手の感情を害し、かえって礼せざるに劣るものである。

栄一は相手に対して常に敬礼を忘れてはならないと言いながらも、形式的な敬礼は却って失礼であると言っています。つまり、心を込めることが大事だということです。

大事なことは、相手を論破して潰すとか、あいつは意見が合わない奴だから会わないでおこうとするのではなく、どれだけ苦手な相手だとしても、自分の意見をしっかり伝える努力をすることなのです。

普段私は人に会ったり、物事に接する時には精神を集中してその人と語り、そのことを処理するように

 普段私は人に会ったり、物事に接する時には精神を集中してその人と語り、そのことを処理するように心がけてきた。例えばどんな人に会う場合でも、相手の身分などに関係なく自分の精神を打ち込んで談話し、また何かを処理する場合にも、そのことの大小に一切関係なく、皆同じように心を込めて処理してきた。中略なぜならば人に接し、物事を処理した後、心中に一点のやましさもなく良い気分でいられたら悪いはずはない。私が人と接して気分が良かったら、他の人も私と同じように気分が良いだろうから、私が良いと感じたことは、また他の人も必ず良いと感じると思う。中略私がそうする根本精神は何かと言うと、ただただ自分の徳義心、人間として守るべき本分であるという自覚からである。事柄の大小にかかわらず、人物の上下を問わず、自分の向こうに立つ人に対しては、満身の誠意を注いでこれに接している。

言葉は禍福ともに引き起こす入り口のようなものだ。ほんのちょっとした言葉であっても、軽率に口にしてはならない。

言葉に出すことで良い効果をもたらすこともありますが、同時に言葉がもとで災いを引き起こす恐れもあります。

禍いの方ばかり見ては消極的になりすぎる。

四つの「命」

天命:天が与える命なので普通は人間の視点では見えません。孔子が「五十にして天命を知る」と言ったように、経験を積むことで見えてくる可能性がある命です。

宿命:これは絶対に変えられない命です。例えば自分の誕生日は生まれた場所、あるいは先祖から受け継いだ遺伝子などです。

使命:その時々で自分がやるべき事です。学生なら勉学に励むこと、社会人なら会社の発展に寄与する、自分の家族を守るというようなことです。

運命:意志や想いを超えて幸福と不幸を与えるものです。「命を運ぶ」と書くように、天命とは異なり、自分のやり方次第で大きく変えられるものです。

世人は、一も二もなく彼を順境の人と思うであろうが、実は順境でも逆境でもなく、その人自らの力でそういう境遇を作り出したに過ぎない。

世に成功熱に浮かされ、野猪的に進む者も多いが、その多くが失敗に終わるは、身のほどを知らぬからである。

事業でも何でもそうですが、初めからずっと順風満帆に物事が進むことは、絶対にありません。必ず難局にぶつかります。その難局をどう凌いでいくかが重要なのですが、 栄一は我慢強く機が熟すのを待ちました。

よく事を通じて、勤勉であっても、目的通りに事の運ばぬ場合がある。これはその機のいまだ熟せず、その時のいまだ到らぬのであるから、ますます勇気を鼓して忍耐しなければならない。

東洋、特に日本では、陰徳をもって行いの上なるものとし、自分の責任はもちろん、他人の責任までも、これを負うをもって、武士道の粋としている。

他責的な人は、これはもう絶対といってもいいくらい、成功しません。なぜなら、他責思考の人は、何事に対しても当事者意識を持てないからです。ビジネスの世界で成長するためには、自責思考を持つことが大切なのです。正しい自責思考とは、まず自分の責任として受け止めた上で、何が問題だったのかを客観的に考えられることです。

一時の成敗は長い人生、価値の多い生涯における泡沫のごときものである。

成功や失敗については、生涯における泡沫とまで言っています。

悪いことをしないというコンプライアンス重視が目的化すると、それに行動が縛られてしまい、世の中のためになることなのに、できなくなる恐れがあります。大事なのは、世の中のために正しいことは何かを見極めることだと思うのです。

長所はこれを発揮するように努力すれば、短所は自然に消滅する。

自分の幸せのためだけに働くのではなく、日本国民全員、あるいは地球上のすべての生き物の幸せのために働くという気持ちを持って働くことができれば、満足感を得ることができます。満足感が得られる仕事って、やっていて楽しいですよね。

たとえその事業が微々たるものであろうと、自分の利益は少額であろうと、国歌必要の事業を合理的に経営すれば、心は常に楽しんで仕事にあたることができる。

インパクト投資とは社会的課題を解決することを意図し、それを持続させるために経済的なリターンを要求するという投資のスタイルです。寄付は基本的に経済的なリターンを求めませんが、インパクト投資はあくまでも投資なので、経済的なリターンも追求していきます。慈善活動ではないのです。

きちんとリターンが得られる投資、かつ社会的インパクトが測定可能であることでより大きなお金を動かすのが、インパクト投資の重要なポイントです。

道徳を欠いては、決して世の中に立って、大いに力を伸ばすことは出来ない。農作物でもさようである。肥料をやって茎が伸び、大きくなるにしたがってこれに相応して根を固めてなければならない。しからざれば風が吹けば必ず倒れる 。実が熟さぬ中に枯れてしまう。

見えない未来を信じる力は、渋沢栄一のような別格な人物だけの特権ではありません。誰もが持っている力です。

それぞれが広く社会全体のことを考えられる人間になることです。 きっと、そこには見えない未来の様々な可能性があると思うのです。

いま一度、入社してからの年月であなたがしてきたことを振り返ってみてください。そして、あなたがこれから、大勢の人達の幸せに貢献するために何をすべきかを考えてみてください。世の中にどう貢献できるのかを頭の片隅において、あなたが、この先もずっと続けていけることを模索してください。

「我々は微力であるかもしれない。けれども決して無力ではありません」

理想を掲げよ!夢は必ず叶う!

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